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最高裁判所第二小法廷 昭和43年(オ)1071号 判決 1970年4月10日

上告人

大久保菊蔵

代理人

下田三子夫

被上告人

矢谷寿雄

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人下田三子夫の上告理由について。

土地の売買契約が仮換地につきその一部分を特定して締結され、従前の土地そのものにつき買受部分を特定してされたものでないときは、特段の事情のないかぎり、仮換地全体の地積に対する当該特定部分の地積の比率に応じた従前の土地の共有持分について売買契約が締結され、買主と売主とは従前の土地の共有者となることは、当裁判所の判例とするところである(最高裁判所昭和四一年(オ)五二九号、昭和四四年一一月四日第三小法廷判決、民集二三巻登載予定)から、上告人は被上告人のため仮換地全体に対する本件土地の地積に応じて従前地全部にわたる相応の持分権につき移転登記をなすことにより売買契約上の自己の債務を履行することができたのであり、被上告人が仮換地指定変更願書に押印を拒んだからとて、それが上告人の本件売買契約上の債務の履行をなしえないことの事由となるものではなく、したがつて、被上告人の昭和四〇年一〇月二一日付契約解除、およびそれに基づく違約金の請求が信義に反し、権利の濫用にあたると解することができない旨の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯できる。そして、売主の担保責任は、当事者の意思に基づかずに民法の定めたものであるが、強行規定と解すべきではなく、信義則に反しないかぎり、特約によつて加重することもできると解すべきである。したがつて、本件損害賠償額の予定の合意は有効である。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(草鹿浅之介 城戸芳彦 色川幸太郎 村上朝一)

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